2016年5月18日(水)

2016年5月18日(水)             「道歌」

 ご存知ですか、道歌?  道歌は、和歌や短歌の形式(5・7・.5・.7・7)を使って詠んだ教訓歌です。

 私が初めて道歌に出会ったのは、大学を出た頃、禅僧の書いた本を読んでいる時です。 当時は辞書も引かずに、禅僧のような道を極めた人の歌だろうと勝手に決め込んでいました。

 先日、「道歌から知る美しい生き方」という本を見つけて、1日で楽しみながら読破しました。 せっかちな性分ですね。

 ここで、誰もが知っていそうな道歌をいくつか挙げてみます。
 まず、一休禅師の有名な歌から、
「門松は 冥土の旅の 一里塚 馬かごもなく 泊まりやもなし」
 めでたいはずの門松を、こんな風に歌にするなんて、さすがは一休さんですね。

 次は、豊臣秀吉の辞世の句。
「露と落ち 露と消えにし わが身かな 浪速のことも 夢のまた夢」
 この歌は、ずっと以前に歴史関係の本で覚えたと思います。 秀吉って、凄いと感心しました。

 秀吉が「人生のはかなさ」を詠んだこの歌で、平家物語の書き出しを思い出しました。
「祇園精舎の 鐘の声、 諸行無常の 響きあり。 ・・・」
 これも短歌ではありませんが、七五調で美しい文章ですね。

 今度は武田信玄の有名な言葉。
「人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり」
 見事に人材登用の核心を衝いていますね。 只者ではないですね。

 信玄は軍旗に孫子から取った「風林火山」を採用しているほどですから、兵法の研究も十分にしていたのでしょうね。 「信玄が生きていたら、信長も武田軍を破ることはできなかっただろう」と言われています。

 紹介したい歌は山ほどありますが、切りがないのでここまでにします。

 道歌とは別に、化政文化のころに流行った狂歌にも見事なものがありますね。 中学生の教科書にも載っている狂歌、ご存知ですか?

「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」
「太平の 眠りを覚ます 上喜撰 たった4杯で 夜も眠れず」

 日本人の心に染み入る七五調で、こんな見事な皮肉を言うなんて、日本人はおしゃれですね。

 最後になりましたが、私が最初に出会った道歌です。
「世の中は 食べてかせいで 寝て起きて ただその後は 死ぬばかりなり」
 禅の本に載っていたのですから、「地位、名誉、金、仕事、人間関係、遊び。 どれも大したことじゃない。 そんなくだらぬことに頓着せず、とらわれのない心で悠々と生きろ!」という感じのことを述べているのでしょうね? 多分。

 じゃ、また。